Gallery Wanderlust




8月8日(木)


カリフォルニア・フィーリン ザ・ビーチボーイズ



もし、…していたら…
「歴史では禁句です」とよく言われることだが…

「もし、ローマ帝国が滅亡していなかったら…」
「もし、キリストが磔刑にされず、生きつづけて天寿を全とうしていたら…」
「もし、織田信長が本能寺で殺されなかったら…」
「もし、坂本龍馬が暗殺されず、維新以降も生き続けていたら…」
「もし、ビートルズが解散せずに70年代も活動を続けていたら…」
「もし、阪神タイガースがランディ・バースを解雇していなかったら…」

歴史上で「もし…」を想像したり、シュミレーションするのは楽しい。
たとえば、信長が暗殺されず、その後20年くらい生きていたら…
確実に彼の手で天下統一されていたであろうし、徳川家康による江戸幕府の成立もなかったであろう。鎖国なんかもしなかったはずだ。ゆえに明治維新もなかった…
ということは太平洋戦争も起こらなかった、広島にも長崎にも原子爆弾は落ちていなかったに違いない…。
「これはなかったはずだ」という想像は容易い。
「じゃあ、逆に何をやったのだろう?」これを想像するのはかなり難しい。
僕は信長が生きていたら、日本はアメリカのような多民族社会になって、国民の半分くらいはキリスト教徒になっていたような気がする…。まあ、その後の誰かがやはり鎖国していたかもしれないけど…いずれにしても、今の日本とは随分違った国になっていたと思う。

ブライアン・ウィルソンという白人ポピュラーミュージックにおける大天才が、1966年に発表したアルバム「ペットサウンズ」に続いて手がけたのが「スマイル」…
結局は完成せず、その断片だけを今日でも聴くことができる。
「1960年代の世界遺産」になったかもしれないそのかけらを拾い集めるような気持ちで、ブライアン選曲によるベストアルバム「カリフォルニア・フィーリン」を楽しんでいる。
そして想像してみた…「もし、スマイルが完成していたなら…」
たぶん今のポップミュージックは少なからず変化していたと思うし、ブライアンもパラノイアに陥ることもなく、20年間ベッドの上でひたすら大食いとアルコールとドラッグ漬けの生活をすることもなかったかもしれない。
でも「スマイル」が完成しなかったからこそ、ブライアン・ウィルソンというミュージシャンが自己崩壊してしまったからこそ、ビーチボーイズの楽曲の多くが、切ないながらも真から美しいと思えるのである。ジョン・レノンがあそこでスパッとやめたからこそ、70年代、80年代と惰性で続けなかったからこそ、いまでもビートルズは新しいと思えるのと同じように…。

先日観たNHKの「BSマンガ夜話」でこんな話をしていた。
多くのギャグ漫画家の場合、もっとおもしろくて新しいギャグを…とどんどん突き詰めていって、誰もついてこれないような未知の領域にまで到達してしまう。気が付くと周りには誰もいなくなって、自分ひとりぼっちになってしまう。結果、連載を止めたり、マンガ自体をやめてしまったり、頭がおかしくなったりする…ものらしい。
1966〜68年頃のブライアンはまさしくこれと同じ状態だったのであろう。
ただひたすらクソ暑いだけで情緒や風情など微塵も感じられなくなった日本の夏で、「夏の物悲しさ」を感じられる至極の一枚だ。