Gallery Wanderlust




8月6日(日)

「菅井汲 展」 〜東京都現代美術館〜



東京都現代美術館はでかい。
しかし予算の問題もあるのか、この器を生かしきった企画がオープン以来少ないのは残念だ。
この空間に負けない作品を作るのも大変だと思うが、コレクションの目玉がリキテンシュタインやウォーホールといった60年代のポップアートが占めているのも解せない。これらは近代美術館に入る作品であって、決して「現代」ではない。近代美術から現代への系統的な流れを位置付けをした上で企画をしていこうという考えなのだろうが、このあたりが公立美術館特有の教育機関としての性格が前面に出て、アートとしてのエンターテイメント的な部分は二の次になってしまっているところだ。

以前この美術館のヒット企画で「マンガ展」があったが、これは非常に素晴らしかった。「明日のジョー」や「アトム」などの最終回原稿がそのまま展示されていたり、「リングにかけろ!」のひとコマが巨大に拡大されて、天井から設営されていたりして空間の使い方が決まっていた。また、普段は書店で「別コミ」とかを読んでいる女の子が食い入るように「エースをねらえ」の最終回シーンに見入っていたり…ど若者から年配者まで、それぞれがみんな楽しそうに作品を鑑賞している姿を眺めているだけでも楽しかった。しかし、このときも最後の最後にロイ・リキテンシュタインである。
別にリキテンシュタインが嫌いなわけではないが、「なんでこれが最後に?」と首を傾げてしまう。これではせっかくの名演技がフィニッシュで着地失敗転倒という感じだ。

ロケーション的には木場公園の中にあって休日は散歩がてらに利用する人も多い。
ライブラリーも充実しているので、企画展を見なくても十分楽しめるのだが…なにせ、館内にあるカフェとレストランがいただけない。郊外のスーパーのテナントみたいだ。展覧会を見たあとの気分を持続させてくれる環境作りを考えることは、美術館にとってそれほど難しいことでもないと思う。休日に散歩のついでにふらっと寄って、展覧会を見て、くつろいで食事をして、ライブラリーで画集を開いたり、ビデオでも見てから帰る…。この一連の流れをいかに心地よく、スムーズに美術館敷地内で展開・完結させるかをもっと真剣に考えてほしい。そちらのほうが、リキテンシュタインをバブリーな値段で買うよりよっぽど安上がりで、利用者にとってもうれしい。

菅井汲で興味深かったのは、作家の一日の食事メニューが、「朝…サラダとオレンジジュース、昼…パスタ、夜…なにも味付けしていないステーキ」これを1日たりと変ることなく毎日飽きずに20年間も続けたというエピソード。究極の空間作りを求め続け、画面から一切の無駄をはぶいた作家の心情を象徴していると思った。

阪急宣伝部時代のポスターも楽しかった。